庄司紗矢香がかねてから演奏を希望していたという、ヴィヴァルディ/リヒターの「四季」のリコンポーズ。これまでの彼女のレパートリーとは大きく異なる作品に挑戦した理由は何か。ヴィヴァルディの原曲だけでなく、リヒター版を演奏する意義とは何か。ナントでの演奏を振り返りながら、「四季」の魅力、ポーランド室内管弦楽団との共演についても話を伺った。

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(c)Marc Roger

 

――今回、ヴィヴァルディ/リヒターの「四季」のリコンポーズを演奏しようと思ったきっかけは?

庄司:2年ほど前にCDで初めて聴いて、あまりにも自然な音楽に仕上がっているので驚きました。「四季」を背骨としながら、そこにマックス・リヒターという作曲家の世界観が重なり、"バロックと21世紀のミクスチャー"として説得力のある音楽に仕上がっていると思います。『Memoryhouse』というリヒターのCDでも、ロシアの詩人マリーナ・ツヴェターエワの詩の朗読が音楽に深みを与えていて、とても印象的でした。ちょうどルネ・マルタンから「2016年のLFJのテーマは"ナチュール-自然と音楽"なんだけれど、何を演奏したい?」とお話をいただいたので、即座に「リヒターのリコンポーズを演奏したい」とお返事しました。

 

――庄司さんにとって「四季」とは?

庄司:最もヴィジュアルな音楽のひとつだと考えています。「四季」の中には"鳥のさえずり"や"川のせせらぎ"を耳にして生まれてきた要素が、音楽として自然な形で存在しています。日常生活で行き詰まった時、自然の中で"鳥のさえずり"を聴くと、「これが音楽の原点なんだ」と初心に返ることができるんです。そういう意味で、自然から生まれたヴィヴァルディの「四季」も、それをリコンポーズしたリヒターの作品も、ともに演奏していくことが重要だと思います。

 

――ヴィヴァルディの原曲と、リヒターのリコンポーズを両方弾いてみての感想は?

庄司:スタイルの違いを強く意識するようになりました。原曲とリコンポーズを比較すると、音が全く同じ箇所がいくつか存在するのですが、たとえ音は同じでも、パルス(拍)のとり方やアーティキュレーション(発音法)の付け方が大きく異なります。そうした違いは、演奏する上でつねに意識しています。

 

――今回、本格的な弾き振りに挑戦しましたね。

庄司:実はナントでのリハーサル初日、指揮者なしで演奏することを初めて知ったんです(笑)。そのため、ポーランド室内管とスコアの譜読みを一緒にしましたが、今までにない経験だったので、逆にとても新鮮でした。若い奏者は、たとえディスコに通っていなくても現代的なリズム感覚が身についていますが、クラシックの伝統の中だけで活動してきた年配の奏者には、そうしたリズムが不自然に感じられるというか、かなり勇気を試される部分があるのは事実です。でも、そうしたジェネレーション・ギャップは、国籍の違いと同じようなもの。じっくりリハーサルを重ねていきながら、ギャップを乗り越えることが出来ました。気心の知れたメンバーたちと、緊密なアンサンブルを作ることが出来たと自負しています。

 

――最後に、LFJの聴衆にメッセージを。

庄司:今回のLFJでは、私が今まで取り組んできた音楽とは全くカラーの異なる、ヴィヴァルディ/リヒターの「四季」のリコンポーズを演奏します。今の時代を生きる我々にとっては、とても共感できる音楽だ思いますし、ただ新しいということだけではなく、バロックの時代から現代まで聴き継がれてきた「四季」という作品に、新たな息吹を吹き込み、そこにマックス・リヒターという作曲家の世界観が重なることで、とても新鮮な作品に仕上がっていると思います。若い世代のリスナーだけでなく、さまざまな世代に聴いていただければと思いますので、楽しみにしていてください。

 


マックス・リヒターからのコメント

 今回、「四季」のリコンポーズが東京で初演されることを大変うれしく思います。庄司紗矢香さんの演奏はドイツのテレビで初めて拝見しましたが、非常に素晴らしいヴァイオリニストです。「四季」のリコンポーズは、ヴィヴァルディという風景(ランドスケープ)の中を旅していく"実験的な旅行"として作曲しました。ヴィヴァルディは「四季」の中で、思わず探索したくなるような美しい風景の数々を表現しています。彼の音楽がすぐれている理由のひとつは、まさにそうした風景にあると思いますし、そこからリコンポーズの着想も浮んできました。演奏をお楽しみください。


 

インタビュー:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)


 

庄司紗矢香がヴィヴァルディ/リヒターの「四季」のリコンポーズを演奏する2公演のうち、126はすでにチケットが完売。215はまだチケットをお求めいただけます。