ラ・ロック・ダンテロン・ピアノ国際音楽祭:演奏会レポート8月8日~10日

●8月8日 21:00~ 
ヤーン・エイク・トゥルヴェ(指揮)ヴォックス・クラマンティス
ジャン・マリー・ロルヴレック(俳優)
LFJでもおなじみのエストニアの合唱団ヴォックス・クラマンティス。このコンサートはラ・ロック・ダンテロン村誕生500年を記念してのスペシャル・コンサート。会場は世界遺産ともなっているシルヴァカンヌ修道院。
写真7.jpg
プロヴァンス三大シトー派修道院のひとつであるこの修道院に足を踏み入れた瞬間、素晴らしいロマネスク様式の建築とその静謐とした雰囲気に心を奪われます。
どこからともなく美しい澄み切った声が聞こえてきたと思うと、回廊の奥から合唱団が一列になってグレゴリア聖歌を歌いながら入場。曲の合間には、僧侶、吟遊詩人、農民、現代人などに扮した男優が、ラ・ロック村500年の歴史を迫力ある演技で語ります。
8_Leslie Verdet.jpg
9_Leslie Verdet.jpg
10_Leslie Verdet.jpg
照明の効果もあいまって、ギヨーム・ド・マショーやペロタンの曲を聴いているうちに、自分自身が中世にタイムスリップしたような不思議な感覚に陥りました。
●8月9日 19:00~、20:30~、22:30~
フランスの伝統を引き継ぐ音楽家によるカルト・ブランシュ
フィリップ・ミュレール(チェロ)、クリスティアン・イバルディ(ピアノ)を中心に9人のチェリスト、9人のピアニストによる饗演
パリ音楽院の名教授ミュレール、イバルディが彼らの弟子、またその弟子を集めたカルト・ブランシュ(音楽家が自由に作品を選ぶコンサート)。チェロはラファエル・ピドゥ、アンリ・ドマルケットらの中堅からエドガー・モローやヤン・レヴィノワらの若手、ピアノはフランク・ブラレイ、フランソワ=フレデリック・ギィ、クレール=マリ・ルゲなどLFJでおなじみの顔ぶれが、チェロ・アンサンブル、2台ピアノなどいろいろな編成で名曲から知られざる作品まで、さまざまな曲を披露しました。
プログラム最後のバッハの4台のピアノのための協奏曲のための舞台転換が終わり、ピアニストたちが登場。気が付くと舞台の正面になぜか1台の椅子が置かれています。するとイバルディ氏があらわれスピーチを始めました。
11_Christophe Gremiot.jpg
「みなさん、ここに椅子が置かれているのは我らの優秀な技術スタッフのミスではありません。チェロのアンヌ・ガスティネルがスケジュールを調整して駆けつけてくれたのです!」すでにこの時点で夜中の12時をまわっていましたが、チャーミングな笑顔で登場したアンヌに拍手喝采。バッハの無伴奏組曲の演奏に皆が聴き入りました。
12_Christophe Gremiot.jpg
普段はあまり共演の機会がないであろう世代の違う音楽家が同じステージに立つと、作品が名演奏家たちを通じて弾き継がれていく音楽家の系譜を感じます。彼らが愛情に満ちた表情でステージ上でコミュニケーションをとりあっているのは実に心温まる光景でした。普段我々が接するのは、音楽家が自分の解釈による演奏を聴衆に聴かせる場面だけですが、実はどの演奏家も教師から伝統を受け継ぎ、またその演奏家も若い世代へと伝えていくという大きな流れの中で、過去の偉大な作品が「いまここ」で演奏されているのだということをあらためて感じました
●8月10日 13:30~ クレール・デゼールによるマスタークラス
LFJと同じく、ラ・ロック・ダンテロンでも連日マスタークラスがおこなわれています。今日はピアノのクレール・デゼールによる室内楽のマスタークラス。受講曲はフランクのヴァイオリン・ソナタ。様子をみようと訪れると、なんと会場はテントの中(!)写真15.jpg
デゼールは聴講者に混じって、座りながら熱心に教えていました。筆者が中に入れないほどの聴講者の数。熱気でムンムンしていました。

Tokyo International Forum 東京国際フォーラム