電子音楽との出会い

毎年面白いコラボレーションが生まれるのもLFJの楽しみの一つですね。マルタンイチオシのコラボが、ピアノのヴァネッサ・ワーグナーと電子音楽のMURCOFによるこの公演でした。butaimurcof.jpg
舞台には、ピアノと文明の機器が並び、普段のコンサートとはちょっと違う雰囲気。ピアノから紡ぎ出される音は機械を通して様々な表情へと変貌してゆき、ケージやアダムス、グラスといった前衛音楽、現代音楽の作曲家達の音楽の世界を瞑想的に作り出していました。ヴァネッサさんも「瞑想的な世界をこのコラボレーションで作りたかった。それは、MURCOFとの共同作業はもちろんだけれど、照明の方とも話し合いをして、視覚的にも聴覚的にも一つの世界感を創作したかったの」とおっしゃるように、照明の持つ『色の効果』もこの公演では有効的に作用していました。
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電子機器の働きによって、ピアノ本来の機能、例えば減衰することしかできないピアノの音が増幅したり、うにょ〜んと響きを変えたり、電子音楽に混じって音色が変化していたり、そういった新たなピアノの可能性を作りあげている点がとても面白いと感じました。
作曲家は楽器の機能の変化によって作品を進化させてきました。チェンバロという鍵盤楽器を経てピアノフォルテが生み出された時代に生きたベートーヴェン。この楽器の発展なしに、彼のあの素晴らしいピアノ作品群は創作されなかったでしょう。もし、ベートーヴェンが現代に生き、この電子音楽とピアノというコラボレーションの持つ可能性に出会っていたら、果たしてどんな音楽が生まれていたのだろうか・・・。きっと凡人の私では想像することのできないような新しい、刺激的で挑戦的な、でも人間的なあたたかみ溢れた音楽が生み出されるのではないかな、ちょっとワクワクしました。現代を生きるベートーヴェンがいたとしたらきっとそんな姿なのではないかしら。
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ルネ・マルタンさんもご満悦のこの表情!

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