音楽と舞踊の融合

無伴奏チェロ組曲は、前奏曲(プレリュード)を除き、全てが舞曲になっています。しかし、実際これでダンスが出来るのかと言うと、音楽学的には矛盾していて「ムリ」なのだそう。
しかしながら、それを本当にダンスとコラボレーションしてしまう、というところがLFJの発想。ルネ・マルタン氏も大プッシュの美人チェリスト、タチアナ・ヴァシリエヴァさんと、日本が誇る現代舞踊家、勅使川原三郎氏による、美しく官能的なステージの幕開けです。

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曲は組曲中の短調曲、第2番と第5番。ほの暗い深みと微かな光を感じさせるヴァシリエヴァさんのチェロの音に、勅使川原氏の静かに、時に激しく揺らめくロウソクの灯のようなダンスが融合。まるでどんどんと心の深淵へと沈んでいくような、幻想的な空間が誕生しました。一つ一つの動きを見逃すまいと、客席も微動だにせず。これはスゴいものを観てしまいました。

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夢とも現ともつかないまま、お二人に突撃インタビュー。
人生初のダンスとのコラボレーションに、「自分の近くで何か大きな力が動いているのを感じたわ。特に、彼が後ろに回って来た時には、ね。お客様にも、それが伝わっているようだったわ」と、興奮冷めやらぬヴァシリエヴァさん。一方の勅使川原氏も、「音楽は偉大なものだから、ダンスで音を翻訳するのではなく音と融け合う事を考えました。彼女も僕も、高い技術をぶつけ合ったんです」と、熱のこもった様子で語ってくれました。

「彼女は心の内で踊り、僕は呼吸で歌いました。そうする事で、融合したと感じる事が出来ます」(勅使川原氏)
その言葉通り、ホール全体が一つに融合した、奇跡のような瞬間を体感した筆者でありました。

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