LFJ委嘱作品、権代敦彦さんの「クロノス」

3日の夜、ホールD7で最後に開かれたのは、「祈り」と題されたスペシャルコンサート。LFJナントおよびLFJ東京の共同委嘱作品である権代敦彦さんの作品が日本初演されました。
ロシアと日本――この二つの国をテーマに作品を書くならば、チェルノブイリと福島の原発事故を意識せざるをえなかったと語る権代さん。「クロノス―時の裂け目―」と題された室内楽は、あの事故に想いを馳せる祈りの時間として提示されました。
実はこの委嘱作品には双子のようなピアノ曲「カイロス―その時」が存在するのです。震災直後に書かれたというこの作品を、児玉桃さんが演奏。かすかな声、つんざくような鋭い音響、大きくうねるグリッサンドによって、人間の運命を決定するような個人的な時間(そして震災が起こったあの瞬間に奪われてしまった命)の物語が展開されました。
終演直後のワンショット!
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つづいて、ヴォックス・クラマンティスの合唱で、瞑想的で静寂に彩られるペルト作品「カノン・ポカヤネン」(抜粋)の演奏。祈りの空間が凝縮されたよう......。
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そしていよいよ、委嘱作品の「クロノス」。ベテランクラリネット奏者・山根孝司さん、そして伴野涼介さん(ホルン)、宮田大さん(チェロ)、池上英樹さん(打楽器)、北村朋幹(ピアノ)という俊英ぞろいの特殊形態のアンサンブルで始まりました。
バス・クラリネットのかすかな呼吸から曲は開始。そこに他の楽器が静かに、しかし緊張感をもった音色で絡み合い、ときに強打し、ときに瞬間的な沈黙を作りながら、混沌とした音群が生み出されていきました。普遍的で大きな時間の流れの中で、気迫に満ちた祈りが痛切に唱えられていくよう。クライマックスは、聴いているだけで動機が速くなってしまうような、あるいは逆に止まってしまいそうなほどに鬼気迫る演奏で、極度の集中力を誘発されました。
終演直後の権代さんに直撃!本日の日本初演はいかがでしたか?
「いやぁ・・・もう、聴いてのとおりですよ・・・」感慨深げにお答えになった権代さん。そうですね。もうあの場に言葉は一切不要でした。
熱気覚めやらぬなか、アンサンブルの皆さんと権代さん。
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