
フローラン・ボファールさんのお名前を覚えていますか。
2011年のLFJに来日して、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」などでピアノを弾いたあの方です。どんな複雑な曲でもバリバリと弾けそうな方ですが、今回は「アメリカ」がテーマということでジョージ・アンタイル、ジョン・ケージ、ヘンリー・カウエルらのピアノ曲を取りあげてくれました。
用意されたピアノは2台。左が普通のピアノ、右が弦に様々な異物をさしはさんで音色を変えたプリペアド・ピアノ。プリペアド・ピアノはこの分野の古典的名作、ケージの「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」(抜粋)のために使用されました。
一方、左のピアノは、カウエルの「マノノーンの潮流」や「バンシー」といった、ピアノの弦を直接はじく内部奏法を用いた作品と、アンタイルの「飛行機ソナタ」や「野蛮なソナタ」のために用いられました。
カウエルを弾こうとボファールさんが椅子に座らずにピアノの弦に直接触って音を出しはじめると、客席はザワザワ。「いったい、なにをしてるの、あの人は?」
プリペアド・ピアノの演奏では、仕組みはどうなっているのかと首を伸ばして楽器を注視するお客さんも(中までは見えませんが)。
ピアノから次から次へと不思議な音があらわれる、アメリカ実験主義音楽の名作をたどる旅。多くのお客さんは予期せぬ驚きを感じて、演奏中に笑ったり、ささやき合ったり(なかには席を立って帰る人も......)。
そして終演後はブラボーの声と手拍子で大盛り上がり。
客席にあふれる驚きと発見の喜び。これぞ「ラ・フォル・ジュルネ」の魅力ですよね~。
「どうしたの?」
「だいじょぶ?」
「なんかほわわ〜んとしてるよ」
おなじ日本報道陣の人々に声をかけられてしまいました。
それもそのはず。ほわわんとした音楽を聴いてきたんですもの。
コープランド作曲の『アパラチアの春』。
これはもともとバレエ音楽なんだそうですが、13人という小編成のオーケストラのために組曲版があるんですね。
アリ・ヴァン・ビークさん指揮、ピカルディー・オーケストラの演奏の様子です(13人はいないけど)。

どこまでものどかで、柔らかな春の日差しに包まれているような音楽。絵物語を見ているような気分にもなりましたよ。
今日のナントは天気予報がハズれて晴れ。春まではまだ遠いけれど......
朝一番で、若手ピアニストのヨーゼフ・モーグさんのリサイタルを聴いてきました。
なんでも超ハイレベルな技術を要するという、ゴドフスキーというピアニストの編曲ものを披露されるということで、楽しみにでかけました!
......が。配られたプログラムを見ると、ゴドフスキーのゴの字もない。
ちょっぴりガッカリ。でも、Abram Chasins(チェイスィンと発音?)という20世紀のアメリカ人のピアニスト兼作曲家の人の前奏曲集が披露されました。

メロディアスで、雰囲気たっぷりの小品でした。Earl Wildのガーシュインの編曲ものは音数が多くてゴージャス。モーグさんの音色も豊かに響きます。アンコールのショパンのノクターンは、くすぐられるように滑らかなパッセージも聞かれました。
朝のコンサートながら、お客さんはブラボーが飛びました。大注目の若手ピアニストさんなのですね。
終演直後にインタビューさせていただきました。

----バックグラウンドを教えてください。
「僕の両親はともにオーケストラ奏者です。母はヴァイオリン、父はクラリネット。音楽的な環境で育ちました。両親が室内楽のリハーサルのために、家にピアノが必要になって、僕が4歳のころに1920年代のブリュートナーのピアノが家に運ばれてきたんだ。それがピアノとの出会い。すぐに即興演奏を初めて、ピアノから離れない子どもでした」
----今一番関心のある作曲家はだれですか?
「う〜ん、一人をあげるのは難しいけれど、一番情熱を感じるのはスクリャービンかな。オーケストラ曲も好きですね。どうしてかはわからないけれど、宇宙から訴えかけられるようです。あの神秘的な音楽、ハーモニーに魅了されますね」
----作曲もなさるそうですね。
「そう。僕の出発点は即興演奏にありますから。僕自身にとって、自分で作る音楽はとても必要なものなのです。いつかレコーディングもできたらいいですね」
87年、ドイツ生まれのモーグさん。にこやかに、爽やかに、インタビューに応えてくれました。
東京でもまた、会えますように☆







