LFJ2019スペシャルプログラム ディーヴァ・オペラ(Diva Opera)による

モーツァルト:オペラ
《後宮からの誘拐》

18世紀ウィーンの聴衆を16世紀トルコの王宮へといざなった、モーツァルト中期の傑作!

オペラ全3幕 120分(途中休憩15分) / ピアノ伴奏版・原語上演(ドイツ語)・字幕無
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト / 台本:ゴットリープ・シュテファニー

ストーリー

スペインの貴族の娘コンスタンツェは2人の召使いブロンデとペドリッロと共に海賊にとらわれ、トルコの太守セリムに奴隷として売られてしまう。
コンスタンツェの婚約者ベルモンテは彼女を探してはるばる太守の後宮までやってくるが、監督官オスミンに見つかり追い返される。 しかし、そこで出会ったペドリッロに、コンスタンツェがいまも一途に彼を想って太守の求愛を拒み続けていると聞いて安堵する。 彼はペドリッロの手引きで若く才能ある建築家を装って太守の邸に入り込むが、怪しむオスミンは何とかそれを阻止しようとする。
一方オスミンは新たな女奴隷のブロンデに言い寄るが、彼女は全く相手にしない。太守セリムは自分を拒み続けるコンスタンツェに業を煮やし、ついには脅し始めるが、コンスタンツェは死も苦痛も恐れないと誓う。
ペドリッロはブロンデに、ベルモンテが助けにやってきたことを告げる。ペドリッロがオスミンに眠り薬入りのワインを飲ませ酔って眠り込んだところへ、ベルモンテを引き入れる。 ベルモンテとコンスタンツェ、ペドリッロとブロンデの2組の恋人たちは再会を喜び合うが、ちょうど手に手をとって逃げ出そうとしたところでオスミンが目を覚まし、今度は全員が捕らわれてしまう。
この騒ぎに起きだしてきた太守は、ベルモンテが仇敵のスペイン軍司令官の息子であると知って、死刑を命じようとするが…

人物相関図

人物相関図

配役

ベルモンテ(スペインの貴族):アシュリー・カトリング
オスミン(太守の監督官):マシュー・ハーグリーヴズ
ペドリッロ(ベルモンテの召使):リチャード・ダウリング
太守セリム:デイヴィッド・ステファンソン
コンスタンツェ(ベルモンテの婚約者):ガブリエラ・キャシディ
ブロンデ(コンスタンツェの召使、英国人):バーバラ・コール・ウォルトン

音楽監督・ピアノ:ブライアン・エヴァンス
総監督:アンヌ・マラビーニ・ヤング
演出・舞台監督:キャメロン・メンジーズ
振付:ローレン・ポールトン
衣裳デザイン:シャーロット・ヒリアー、ウェンディ・ノウルズ
衣裳:シャーロット・ヒリアー
かつら:ジョアンヌ・ベリー

ディーヴァ・オペラって?

2006年のLFJではチケット即完・話題沸騰!

1997年にブライアン・エヴァンス(音楽&芸術監督)とアンヌ・マラビーニ・ヤング(総監督)によって創設された、イギリス屈指の室内オペラ・カンパニー。 その工夫を凝らした舞台演出により、オペラのみならず広く演劇の領域でも高い評価を得てきた。
現在、年間約50公演を行っているディーヴァ・オペラは、室内オペラの魅力を伝える「大使」として世界中をまわっており、これまで英国およびヨーロッパ各国だけでなく、ロシア、日本、南アフリカなどから招かれている。
ディーヴァ・オペラは、原語でオペラを上演する方針を貫いている。 優れた演じ手たちは、時代設定に合わせた豪華な衣裳を身に着け、ピアノ伴奏と共に古典作品に現代的な息を吹き込んでいく。 毎年、2作品の新制作を発表しているほか、幅広いレパートリーから上演作品を選んでおり、2019年シーズンには、プッチーニの《蝶々夫人》、ロッシーニの《アルジェのイタリア女》、モーツァルトの《後宮からの誘拐》を取りあげる。 これまで好評を博した作品に、《フィガロの結婚》、《コジ・ファン・トゥッテ》、《こうもり》、《ラ・ボエーム》、《チェネレントラ》、《ランメルモールのルチア》がある。

2006年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに登場し、モーツァルト作曲『コジ・ファン・トゥッテ』で東京国際フォーラムの会議室をオペラハウスに変えてしまった「ディーヴァ・オペラ」が13年ぶりに再登場する。 今シーズンの彼らのレパートリーの中から、東京で上演されるのは再びモーツァルト。演目は『後宮からの誘拐』だ。

ディーヴァ・オペラとは1997年に創設されたイギリスの室内オペラ・カンパニーの名称。 ピアノと歌手のみの小規模なカンパニーながら「オペラ伝道の大使」として毎年50以上の公演を行い、国際的にも高い評価を得ている。これまでに本国イギリスとヨーロッパをはじめ、ロシア、南アフリカ、日本を訪れ、原語上演はもちろん、ニーズに応じて英語やフランス語の訳詞で上演することもあるという。

モーツァルト・オペラは歌手たちの優れたアンサンブルによって成功が決まるので、ディーヴァ・オペラにとっても最大の腕の(声の?)魅せどころだ。 2006年のラ・フォル・ジュルネでの『コジ・ファン・トゥッテ』は、ロココ的な衣装を身に着けた歌手たちが所せましとアクティヴで表情豊かな演技を披露し、さまざまな重唱とアリアでオペラの面白さを伝えてくれた。 幕も舞台美術もないシンプルな照明のみの上演だが、それゆえにオペラの本質的な美点が際立っていたのを覚えている。200席ほどの会場が声のエネルギーでいっぱいになり、最後は割れんばかりの大喝采だった。13年前のラ・フォル・ジュルネでの上演は2回だったと思うが、売り切れのチケットを拝み倒して手に入れて2回とも見た記憶がある。 美声の歌手たちは素晴らしい美男美女でもあり、演劇の本場イギリスからやってきただけあって、最上レベルの芝居を見せてくれたのだ。

今回の『後宮からの誘拐』は2019年にとってタイムリーなオペラでもある。 イスラム社会と欧州社会のボーダー、異文化の相克、その上での人間の素晴らしい寛大さが描かれている。 モーツァルトは200年以上も前に、現代という時代を予見していたかのようだ。生粋のコスモポリタンであり、大きな意味での「道徳」の音楽家なのだ。 ディーヴァ・オペラは今年のレパートリーにプッチーニの『蝶々夫人』とロッシーニの『アルジェのイタリア女』も加えているが、エキゾチシズムと異文化の理解、という共通テーマがあるような気がしてならない。彼らはとてもジャーナリスティックな集団でもあるのだ。

オペラは長くて難しい…と思っている人たちにこそ、ディーヴァ・オペラは扉を開きたいと思っている。 前回の爆発的人気を反映してか、今年は全3回の公演が予定されているので、筆者は出来れば3回見に行きたい。火花が散るようなオペラ・マジックを見せてくれる人たちだ。

小田島久恵(音楽ライター)

ピアノ伴奏でお届けする上質な室内オペラをLFJならではのお得な価格で!

指定席 ¥3,500 / サイドビュー ¥3,000
ホール B7 5/3 127 20:30-22:30
5/4 227 20:30-22:30
5/5 326 19:00-21:00