LFJ2019スペシャルプログラム②

ミクロコスモス

ナント公演でも聴衆が大熱狂

今年のラ・フォル・ジュルネに登場する「ミクロコスモス」は、すべての聴衆に絶対聴いてほしい超イチオシ・アーティスト。 2018年2月にナントで行われたLFJで彼らを聴いた(観た)のが筆者のミスロコスモス初体験だが、幻想的な演劇のようなユニークなパフォーマンスは、現地の音楽祭の会場であるシテ・デ・コングレの1000席ほどのホールに集まった聴衆を一人残らず熱狂させ、最後は盛大なスタンディング・オベーションが巻き起こった。ハンドベル演奏で始まり、幽玄な合唱パフォーマンスが繰り広げられた後、男女が何組ものカップルになって客席から退場するセレモニーのような構成で、暗闇に集ったオーディエンスは人の声が誘う聖なる時間と空間を体験したのだ。ナントでのLFJ会期中、彼らの公演を可能な限り追いかけたが、口コミで広まったのか回を重ねるごとにお客さんが増えていったのを覚えている。涙を流して拍手し、強烈な余韻に浸ってなかなか会場を去らない人々もいた。

彼らはフランス・トゥールを拠点に活動する合唱アンサンブルで、創始者で指揮者でもあるロイック・ピエールが台本・演出も手掛けている。 アカペラ合唱のクオリティは高く、さまざまなスタイルの発声で幻惑的な声の万華鏡を作り出し、古代から未来までをワープする(!?)特異なサウンドスケープを現出させる。 ミクロコスモスの世界観はどこかSF的なのだ。2018年5月に再び彼らの演奏を聴けることを楽しみにしていたが、残念ながら東京には登場せず奈良での公演のみを行っていった。 2019年はいよいよ、林英哲&英哲風雲の会との共演でLFJ東京に現れる。 2018年奈良で初演され、今年の2月にナントでも再演された「JUMALA~ユマラ」を披露する。北欧神話に登場する「樽と縁が深い神ユマラ」をテーマに、舞台中央の太鼓を樽の木に見立て、その周りを巡る歌手たちが惑星を表現するという。このストーリーを聞いただけでも胸騒ぎしてしまう。 会場が特別な空間となり、日常から切り離された宝箱のような世界が繰り広げられるはず。 もうひとつは、彼らの代表作『ヴェールを剥がれた夜』で、三部構成で対照的な美学の作曲家の曲を並べ、声のパワーで融合させる作品。 これもロイック・ピエールのオリジナルのシナリオによって創造されている(『ヴェールを剥がれた夜』はミクロコスモスのみの上演)。
クラシックにも演劇にもワールドミュージックの枠にも収まらない、超個性的というよりほかないミクロコスモス。「一期一会」のアーティストが多い中、彼らと出会えた聴衆は心から幸運だと思ってしまう。お勧め中のお勧めアーティスト。

小田島久恵(音楽ライター)


ミクロコスモス出演の注目公演

指定席 ¥2,800 / サイドビュー ¥2,500
ホール B7 5/4 221
Jumala ユマラ
9:30-10:15
5/5 325
La Nuit dévoilée ヴェールを剥がれた夜
17:00-18:00