諸大陸を潤す大河をテーマに、ヨーロッパからロシア、アメリカ、インド、さらにはアフリカ を周遊する“音の世界旅行”へと聴衆の皆さまを誘(いざな)います。古くから、河川は流域の 文化や音楽の発展において中心的な役割を演じてきました。クラシック音楽史上でも、河川は 音楽家たちに多大な影響を与え、直接的または間接的に数々の楽曲にインスピレーションを与えてきました。
モーツァルトやベートーベン、リスト、バルトークらの活動拠点であった楽都ウィーンおよびブダペストと特に強く結びついているヨーロッパ最⻑のドナウ川。ヨハン・シュトラウス 2 世のワルツ《美しく⻘きドナウ》はよく知られています。スメタナは、チェコ共和国内で最⻑の川モルダウ(ヴルタヴァ)川からインスピレーションを得て、交響詩〈モルダウ〉(《我が祖国》)を作曲しました。フランス最⻑の川ロワール川のあるロワール渓⾕に王侯貴族たちの住居として建つ城々は、その⽂化的な活気によって、ジョスカン・デ・プレ、クレマン・ジャヌカン、クロード・ル・ジュヌといった作曲家たちに影響を与え、新たな⾳楽様式の出現を後押ししました。さらにヨーロッパでは、スイス、ドイツ、オランダを流れるライン川から、沢⼭の名曲が⽣まれました。シューマンの交響曲第 3 番《ライン》はもとより、この⼤河を舞台とする「ローレライ伝説」も、ワーグナー(《ラインの⻩⾦》)やリストら、数々の作曲家たちの創作意欲を刺激しました。ロシアの「⺟なる川」と呼ばれるヴォルガ川は、有名な《ヴォルガ川の⾈歌》をはじめとする多くの⺠謡の題材となっています。
古代都市バビロンの象徴でもあった名⾼いユーフラテス川は、旧約聖書『詩篇』の「シオン讃歌」など、数多くの聖なるテクストにもとづく⾳楽に登場します。ヨルダン川は、イエス・キリストが洗礼を授けられた場所として知られ、クラシック⾳楽の重要なレパートリーに幾度もインスピレーションを与えてきました。
そして北アメリカ⼤陸のミシシッピ川は、ブルースおよびジャズの誕⽣と切っても切り離せません。この⼤河の流域、特にニューオーリンズで⽣まれた⾳楽ジャンルは、アメリカのみならず世界中の⾳楽に深い影響を与えました。南アメリカ⼤陸のアマゾン川も、ブラジル出⾝のヴィラ=ロボスや、コロンビア、ペルー、ベネズエラ、ボリビア出⾝の作曲家たちの⼿を介して、クラシック⾳楽のレパートリーに鮮明な刻印を残してきました。
「LES FLEUVES(レ・フルーヴ) ―― 大河」のテーマビジュアルは、アーティスト|タイチさんの作品「モナリザの休日」です。今回のビジュアルについて、本人からコメントを寄せていただきました。
<モナリザの休日>
僕は幼少期から気づけばいつも絵を描いていました。頭の中にある不思議でポップな幻想世界を、鮮やかな色彩を基調にキャンバスへ移すことで表現しています。日常の小さな幸せや不思議な物語をモチーフに、線用ペンで描き出す人物や動物たちは、明るい線とストーリー性を持ち、観るすべての人に温かさと想像力を届けたいと考えています。名画を現代風にアレンジするというスタイルは、僕の内なる世界を共有する手段です。
高橋太一(TAICHI/タイチ)
2005年生まれ 東京拠点
幼少期から絵を描くことを好み、自身の頭の中の不思議な世界観を作品化するスタイルで注目を集めています。
優しく鮮やかな色彩と温かな物語のモチーフで描き出す作品は、日常のささやかな喜びやユーモアを、名画や歴史的モチーフの現代的再解釈として表現しています。
観る者に深い温もりと余韻を残す若き作家です。
Web:
https://taichi-takahashi.jp/
Instagram:
@taipopo729